制作ねぶた
2022年
知事賞
JRねぶた実行プロジェクト
鍾馗
中国・唐の時代。病にかかった玄宗皇帝は、鬼たちが悪事を働く悪夢にうなされていた。
その夢の中に、鍾馗と名乗る巨漢が現れる。玄宗皇帝が素性を問うと、「かつて科挙の試験に落第した者だが、常々天下の悪鬼を退治することを願っていた」と答え、たちまち鬼たちを捕え退治してしまった。玄宗皇帝は夢から覚めると病が癒えていた。
こうした伝説を持つことから、鍾馗は疫病を追い払う神や学業成就の神として、中国のみならず日本でも広く信仰を集めた。五月人形や屋根の上の飾りなど、今日でも生活の中に根付いた存在である。
新型コロナウイルス感染症第六波の一日も早い終息を願い、六匹の鬼を鋭い目で睨みつける鍾馗の姿を表現するものである。
ねぶた制作/解説 竹浪 比呂央
マルハニチロ侫武多会
豪傑武松 猛虎退治
水滸伝は百八星のひとり、武松。
素手の喧嘩が滅法強く、浴びるほど酒を飲むのが大好きな、身の丈八尺もある大男だ。
武松は故郷に帰ろうと、景陽岡という峠に差し掛かった。ふもとの居酒屋の主人が「人食い虎が出るからひとりで行くのは危ない」と止めるのも聞かず、景気づけに強い酒を十五杯も飲んで、峠越えに出発した。
登り始めたはよかったものの、酔いが回ってきて、上手く歩けない。少し横になって休もうとしたその刹那。さあっとすさまじい風が巻き起こり、突然、巨大な人食い虎が姿を現した。
やられる前にやらなければ・・・。
襲い掛かる鋭い爪に牙。身を翻して素早くかわす。隙をついて頭をしかと押さえつけると、力の限り拳を叩き込んだ。酒を飲めば飲むほど強くなる、と豪語する武松の鉄拳の嵐によって、人食い虎はめでたく退治されたのだった。 人々を困らせていた虎を倒した武松は一躍、英雄になった。この後も幾多の困難を乗り越えていくが、それはまた別のお話。
超人的な力で強敵に立ち向かう武松の勇姿。苦しみが絶えない世の災いを払い、日常が戻り、恒久的な平和が続くことを願う。
ねぶた制作/解説 手塚 茂樹
ねぶた大賞/
最優秀制作者賞
青森菱友会
龍王
法華経に登場し、仏法を守護するとされている八大龍王。
水に関する神として、雨乞いや海上安全などにご利益があると信じられてきた。
青森市浅虫にも八大龍王が祀られている。その御神体は巨大な天然の流紋岩で、表面には白い龍の姿がうかぶとも言われている。海岸沿いの見晴らしの良い小山に建てられた社殿から浅虫の人々と自然を見守り続け、龍神さまと呼ばれ地元の人々に親しまれている。
八大龍王のうち難陀龍王と沙羯羅龍王は、千手観音の眷属である二十八部衆にも属しており、京都の三十三間堂に安置されている彫像に代表されるように、主に武将の姿で表される。
ねぶたは、清水を操る難陀龍王と沙羯羅龍王のお姿である。
ねぶた制作/解説 竹浪 比呂央