マルハニチロ侫武多会
大森彦七 と千早姫
湊川の戦いで南朝側の名将 楠木正成を討ち取った大森彦七は、帰郷した後祝舞のために寺へ向かっていた。
道中、舞台鑑賞を望む娘と出会い同行を許すが、実はこの娘、楠木家の宝剣『菊水』を取り戻し、父の仇を討つため近づいてきた正成の娘、千早姫だった。
増水した川にさしかかり、彦七は娘を背負って渡るが、途中で背後から鬼女の面を被り恐ろしい鬼へと姿を変えた千早姫が襲いかかって来た。
争いの中で正体を見破った彦七は、千早姫から誤解を受けている事を知り、真実を語る。
楠木の本陣に攻め入ると、既に正成は切腹直前であったが、武士の礼を尽くして最期を見届け感謝された事、そこに残された刀を宝剣と知らず携えていた事を明かしたのである。
全てを理解し、涙を流して彦七のもとを去る千早姫。その腕には宝剣『菊水』がしっかりと抱かれていた。
「新 歌舞伎十八番 大森彦七」の一場面である。
父を想う娘。娘の気持ちに応えた武将。
現代に薄れつつある「思いやる心」を見つめ直し、新時代『令和』に大いなる和の心を重んずる『大和の国 日本』を再確認したい。
青森菱友会
紀朝雄 の一首
千方 を誅 す
草も木も 我が大君の國なれば いづくか鬼の 棲なるべき
天智天皇の御代の伝説である。
藤原千方という豪族がいた。彼は、金鬼・風鬼・水鬼・隠形鬼という四鬼を意のままに操ることができた。堅固な体で矢をも通さない金鬼。大風を吹かせ敵城を吹き破る風鬼。洪水を起こし陸地で敵を溺れさせる水鬼。その姿を隠し突然敵に襲いかかる隠形鬼。四鬼の術はいずれも人の力では防ぎようがなく、千方の領する伊勢・伊賀両国の王化は難航を極めた。
こうした事態を受けて、天皇より千方討伐を命じられたのが、紀朝雄という人物である。
朝雄はかの地に赴くと、冒頭の和歌を一首読み、鬼たちに向けて送った。「草も木もすべてこの国のものは天皇が治めているのだ。鬼の居場所などどこにあろうか。」この歌を受けた四鬼は術を奪われ一目散に逃げ去った。そして勢力を失った千方を、朝雄は見事討ち果たしたのである。
新天皇陛下の御即位を奉祝し、新時代「令和」のこの国の安寧と繁栄を祈り願うものである。