マルハニチロ侫武多会
海神 と
山幸彦
昔々…兄の海幸彦(うみさちひこ)から借りた釣針を無くした弟の山幸彦(やまさちひこ)は、どうすることもできず困り果て、海岸に座り込んでいた。そこへ突如現れた塩椎神(しおつちのかみ)の教えにより、深海に住む大海の主、海神(わだつみ)の宮を訪ねた。海神は大いに歓迎し、娘の豊玉毘売(とよたまひめ)と結婚させ、山幸彦も時を忘れて日々を楽しんだ。
数年後、深いため息と共に悩みを打ち明けた山幸彦を見た海神は、全ての魚達を集めて調べることにした。すると、長い間喉の痛みを訴えていた大鯛から、例の釣針が出て来たのである。鰐鮫(わにざめ)に乗って地上へ帰る山幸彦に、海神は釣針と、潮の満干を司る霊力を持った『潮盈珠(しおみつたま)』と『潮乾珠(しおひるたま)』を授けた。釣針を返しに兄のもとへ戻った山幸彦だが、海幸彦は素直に受け取らず争いになる。山幸彦は海神から貰った珠の効力で降参させ、その後は助け合い仲良く暮らしたのであった。
生命の源である、広大な海。最近は環境汚染が進みさまざまな弊害も起こっている。この状態が続けば、やがて我々は海神の怒りに触れるであろう。美しい海を、地球を未来に残すため、これからも自然の大切さを考えていきたい。
青森菱友会
箭根森八幡
時は平安。
本州の北の果て、いまの青森県下北半島は艮(うしとら)の鬼門に当たり、悪鬼が住みついては害をなしていた。人々は困り果て、遠く京の都まで行っては、名のある武士に鬼退治を頼み込んだ。その願いに応えたのは、武勇の誉れ高き源頼義。兵士たちを従え、東北へと進軍する。鬼の住まう佐井(青森県佐井村)へやって来ると、頼義は海水で禊みそぎし、一心不乱に武運の神である八幡神へ加護を祈った。
祈り続けること七日目。
にわかに暗雲たちこめ、波は逆立ち翻ひるがえり、突風が吹き荒ぶ。そこへ忽然と現れ襲いかかる悪鬼。身の毛もよだつ恐ろしい鬼の形相に苦戦を強いられる。と、その時。一軍の前に顕あらわれたるは八幡神。青龍に護り導かれ、神馬にまたがると、神通力を宿した弓矢をすっと空へ引き放つ。するやいなや、邪気を祓はらう音が海に鳴り響き、雲を蹴散らすと、悪鬼を射貫いた。轟音をあげ落ち来る悪鬼。八幡神の助けを得、鬼退治をすること叶った。頼義はこれに感謝し、神の箭やの根石(矢じり)がある場所に八幡神を祀ることとした。
これが現在も佐井村に鎮座まします箭根森八幡宮である。神馬にまたがり、神変の弓矢を引き放ちて、まさにいま悪鬼を射落とす武神・八幡神の姿をねぶたに顕現す。